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ニュースリリース
アイルランド、禁煙法施行で
空気汚染物質の減少と従業員の健康状況の改善が明らかに
〜 ダブリンのパブで調査 〜
2007年5月14日 禁煙広報センター

 ダブリンのタバコ・フリー・ソサエティ研究所は、「アイルランドのパブの空気汚染物質の量が、禁煙法施行後83%低下した」と4月に発表した。同所はダブリンのパブを対象に、2004年9月の禁煙法(飲食店やオフィスなどの労働環境の全面禁煙を規定)の施行前後で、パブの室内汚染度と従業員の健康状況の変化を調べた。

 室内汚染度については、ダブリンの42のパブを対象に、代表的な大気汚染物質の一つ、微小粒子状物質(PM2.5)*1の量を測定した。また、26のパブで、WHOの外部組織である国際がん研究機関(IARC)から発がん性があると勧告されているベンゼンの濃度を調査した。健康調査については、パブで働く男性従業員81人を対象に、肺機能、一酸化炭素排出量、ニコチンの代謝産物である唾液中のコチニン濃度を検査。さらに、受動喫煙の状況と呼吸器の症状についての質問紙調査を併せて行った。

 本調査の結果、禁煙法施行後はパブ内の微小粒子物質が17%に、ベンゼンの濃度が20%に減少したことが分かった。従業員の健康状況においても、禁煙法施行後は非喫煙者(喫煙したことがない人と以前喫煙経験のある人を含む)の努力肺活量(FCV)*2と全肺気量(TLC)*3が増大し、一方で呼気中の一酸化炭素量は79%低下し、ニコチンの代謝産物の1つであるコチニンの唾液中の濃度も81%低下した。

 呼吸器症状に関する質問紙調査によると、とくに非喫煙者の従業員では咳や痰の症状がある人が55%から34%に減り、一方で、喫煙者には有意な減少が見られなかった。煙による刺激に伴う諸症状は、「目が赤くなる、ヒリヒリする」は、以前喫煙経験のある非喫煙者では68%が6%に、喫煙したことがない非喫煙者では59%が15%に、「喉の痛みやかゆみ」は、喫煙したことがない非喫煙者は47%が21%に、以前は喫煙していた非喫煙者では48%が16%と、いずれも大きく減少したが、ここでも喫煙者での有意な減少は見られなかった。

 同所所長で、セント・ジェームス病院呼吸器科医のルーク・クランシー教授は、「室内の空気がクリーンになり、従業員の一酸化炭素量と唾液中のコチニンが減少した。さらに、呼吸器系の症状が改善したことを、データで示すことができた」と禁煙法施行の意義が本調査で明らかになったと述べている。

 この研究結果について、産業医科大学の健康開発科学研究室の中田ゆり氏は次のようにコメントしている。
「パブやバー、居酒屋における環境タバコ煙の濃度は、一般の職場や公共空間よりはるかに高く危険であることは明らかであり、その劣悪な空気環境の中で働く労働者の健康被害については数多くの報告がある。今回の調査が示しているように、禁煙法の施行は特に労働者の健康生活に大きな影響を与えている。労働者が平等に清浄で安全な空気を吸うことは基本的な人権であり、禁煙法により労働者がタバコの煙から守られるようになったことは大変画期的だ。

 日本では2003年の健康増進法施行により、公共空間や職場における受動喫煙防止対策が促進されたものの、アルコールを提供するパブやバー、居酒屋では禁煙店が0.1%もない。なにかしら対策を講じている数少ない店舗でも、禁煙席や通路へも煙が流れる不完全分煙がほとんどである上、従業員は喫煙席へも立ち入って働かなくてはならないため、現在もサービス産業では数多くの労働者が濃度の高い受動喫煙に曝露されている。

 空間分煙による『利用者の受動喫煙防止』という視点だけでは不足であり、そこで働くすべての労働者が受動喫煙曝露から守られる『禁煙化』が求められる時代になっている。日本においても、『職場を禁煙化したことによる従業員の健康状態の変化』についての調査が行われるような社会の実現が求められている」。


参考文献
Patrick Goodman, Michelle Agnew, Marie McCaffrey, Gillian Paul, and Luke Clancy
“Effects of the Irish Smoking Ban on Respiratory Health of Bar Workers and Air Quality in Dublin Pubs”
April 16 issue of American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine


*1. 微小粒子状物質
 粒径2.5μm以下の小さな浮遊粒子状物質。
 肺の奥深くまで入りやすく健康への影響も大きいと考えられている

*2. 努力肺活量(FVC)
 肺活量と類似した、肺機能を測る指標
 最大吸気位からできるだけ速く、すべてを吐き出したときの肺気量

*3. 全肺気量(TLC)
 最大吸気時の胸郭内の全空気容量


この件に関する問合せ先
禁煙広報センター (http://www.kin-en.info) 屈岡(くつおか)/坂本
電話: (03)5445-1273 ファックス:(03)5427-7325
e-mail:info@kin-en.info


*5月31日は世界保健機関(WHO)が定める「世界禁煙デー」です。厚生労働省も平成4年から世界禁煙デーに始まる1週間を「禁煙週間」(5月31日〜6月6日)と定めています。

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